古い旅館に行くと、見たこともないタイルの玄関や風呂場などがあり、子供の頃は少し気味が悪かった。タイルの冷たい感触は足が一番おぼえていて、指先に力を入れそっと歩く。白と黒のタイル製ゲタを見た時、そんな記憶が呼び起こされた。タイルといえばジャン=ピエール・レイノーの白い部屋を思い浮かべるだろう。作者の山崎暢子は硬いタイルを柔らかい感触に置きかえる。布や水や鯉になったりする。