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寒くなってまいりますと、街で目につく文字が「アツアツの・・・」などでございます。日本人は食感を大切にし、表現することも得意です。ひえひえ、シコシコ、つるつる、プチプチ、などなど温度や歯触り喉越しなどを重視いたします。もちろん香りや味そのものにもうるさいのですが、食感にこれほどこだわる国民も少ないのではないでしょうか。 |
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「おいしい」と感じる味覚は、舌のみが感じるのではなく、五感を統合するものです。見た目やその場の雰囲気、自分の体調や誰と食べるかなども重要です。人間はともすると感覚が過剰に傾きがちです。「激辛」とか「キンキンに冷えた」などは味覚を超え苦痛さえ感じさせます。江戸っ子が唸りながら熱い風呂に入ることや、若者が耳などにピアスの穴を空けることついて哲学者の鷲田清一さんが「人は自分をリアルに感じることができないと、少し痛みをともなう行為によって自身を確認しようとする」と上手く説明しているのでございます。 |
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私が子供のときから疑問に思うことがありました。「炊きたてのご飯はおいしくない」「冷え過ぎの飲み物は味がない」です。ピカピカ光る熱いご飯は味が解らず、氷の入った飲み物は基本的に冷え過ぎです。程よく湿気と熱がとんだご飯、程よく冷えた飲み物がウマイと感じさせます。コーヒーを入れたときの香りは最高です。期待をして少し飲むと熱くて苦みだけを感じます。少し待って香りを楽しみながら飲みますがまだ味は充分にありません。ぬるくなった頃、味覚的に一番おいしいと感じるのでございます。 |
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感覚というのは個人差のあるものです。経験や文化によるところも多いと思われます。経験から言いますと、私の主張はかなりの小数派に属します。これまでに何度かあったのですが、ぬるくなるのを待っていたコーヒーを片付けられたことがあります。過剰さも否定しませんが、程々がよろしいのではございませんか? |
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