今でも、女性シンガーは自分にとって特別の存在です。でも、好みは確かに変わって行くものでございます。ダイアン・シューアをステージで観て強い印象を受けない人はいないでしょう。ただ、はち切れんばかりの歌唱を好むかどうかは人それぞれです。1953年の誕生時に事故で失明しながらハンディーを乗り越えた歌唱力は折り紙付きです。歌うことが全て、楽しくてしょうがない、そんな思いが全身から伝わってきます。CDでは、そのことが少しアダになるような気がしていました。2000年に発売された『Diane Schuur - Friends For Schuur』は、ゲストも豪華な期待以上の内容で、私の愛聴盤になりました。
盲目の歌手はたくさんいます。レイ・チャールズやスティーヴィー・ワンダーは共に好きなアーティストです。ダイアン・シューアはけして偶然生まれた訳でなく、その同じ盲目の歌手を敬愛し影響を受けたと聞きます。そして、タイトルの「フレンド」あるように、二人がスペシャルゲストとして参加しているのです。アルバムを聴くと、スティーヴィーの作品『心の愛』を歌う本当に幸せそうな彼女の姿が目に浮かびます。あの1985年『We Are The World』録音のとき、大御所クインシー・ジョーンズがイライラしてタクトを振っていると、スティーヴィーが「クインシー怒るなよ」の一言。その一声で場は和んだのでございます。
『ダイアン・シューア』は、たまに聴くだけですが、その度に感動し元気が出ます。最近のアルバムでは『虹の彼方に Live in London』もお薦めです。スティーヴィー・ワンダーも、実は歌う姿を見るのが好きでした。考えてみると、盲目の人を視るというのは皮肉です。しかし、大事なのは音楽性が特に優れていることだという点を誤解ないようにお願いします。その上、人間的にもスバラシイことが観ていると解るのでございますから・・・。