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49アイドルの勧め(平成19年6月吉日)
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71 タンポポの薦め (平成21年4月吉日)
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1984年、場所は思い出せませんが、私は映画ポスターの前で釘付けになりました。『お葬式』というタイトルの奇想さと描かれた人物イラストの秀逸なこと。監督の伊丹十三は、俳優として少し観ている程度でした。後で知ったのは、小学生の息子さんが描いた絵だとか。直感的に、観るべきだと思ったのでございます。映画の着想もさることながら、一人ひとりの役者の個性を実に巧みに生かし、笑いを誘います。

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伊丹は、妻(宮本信子)の父親の葬式で喪主となった実体験をもとに、わずか1週間でシナリオを書き上げたそうです。私もその頃、お世話になった近所の偉い先生の奥さんが亡くなり、葬儀の手伝いに行った経験がありました。不思議なことは、奥さんを知らない人が、行列をなして参列したのです。「そうか、葬式は亡くなった人のためではなく、残された人のためにある」と私なりに考えました。その後、私も父を失いましたが、お墓というのも、つくづく生きている者のためにあるのだと思うのでございます。

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翌年封切られたのが『タンポポ』。それもまた意外なタイトルで私は観のがしてしまい、後からビデオなどで何度か観ました。「食」をテーマにしたユニークな作品です。『マルサの女』では、山崎努が嬉しさのあまり踊るシーンがありましたが、観ている自分も踊りたいほど面白い。伊丹は、1997年までに10本の映画を残し、この世を去ります。「伊丹映画」というブランドを築き上げ、映画界に大きな影響を与えました。私の好きな『Shall we ダンス?』も、伊丹の存在がなければ生まれなかったでしょう。

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ところで、今回のアカデミー外国語映画賞『おくりびと』。「死」という難しいテーマに取り組んで、見事な作品に仕上がりました。その中でも、山崎努の存在感が光ります。最近になって知ったのは、十三は伊丹万作という映画監督の父を持っていたこと。多才であった十三は、けして偶然に『お葬式』が撮れた訳ではないのでございます。今回のコラムは、ささやかですが前回の「ラーメン」つながりで書いてみました。

掌中のアート
午後5時55分
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