 |
「どうやってこんな傑作をつくるのか、わからない」は、映画予告でのNYタイムズ紙評。俳優としてだけでなく、クリント・イーストウッドの監督としての素晴らしさはどうでしょう。『硫黄島からの手紙』にも本当に驚かされました。『チェンジリング』は観逃してしまったのですが、『グラン・トリノ』には初日に向かいました。感想は「78歳になって、なんでこんな大傑作が撮れるの?」でございます。 |
 |
最後の出演作と言われている『グラン・トリノ』。淡々とした語り口でアメリカの日常が進み、凝ったセットも派手な演出もありません。役者も無名の人ばかりでございます。しかし、ありふれた老人が持つ固有の歴史、人種問題、家族の崩壊、生と死、性と暴力、孤独や悲しみが自然でさりげない出来事に凝縮されています。そして、自動車工だった主人公の分身ともいえるフォードの名車グラン・トリノが象徴として物語に深みを与えます。どうにも出口が見えなくなった最後、想像もしない衝撃のラストシーン・・。 |
 |
マカロニ・ウエスタンで出世作となった『荒野の用心棒』を思い出します。三船敏郎主演の『用心棒』を翻訳したイタリア映画で、クリント・イーストウッドは、自分の成功は黒澤明のおかげだと本気で考えていたようです。また、セルジオ・レオーネなどの名監督との仕事を通じて、映画監督とはなにかを学んでいったのかもしれません。私は以前にスペイン中東部を訪れた際、そこがマカロニ・ウエスタンの撮影地だと聞きピンときませんでしたが、この機に少し調べてみることで合点がいったのでございます。 |
 |
黒澤が敬愛する映画監督はジョン・フォードで、黒澤映画の影響を受ける監督は数知れず。『硫黄島からの手紙』の栗林中将は、アメリカ留学をした軍人です。私は彼の生家とさほど遠くない場所で生まれ育ちましたが、映画を観るまで存在さえ知りませんでした。しかし、巡り巡って、人は人を育て、才能は才能を呼ぶのでございます。「死は終わりではない」「人は一人ではない」それでは「さよなら、さよなら・・」 |
 |