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49アイドルの勧め(平成19年6月吉日)
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80 バラードの薦め (平成22年1月吉日)
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アルトサックスを吹いていたことがあり、ジャズでサックスを聴くと、また楽器を手にしたいとの思いは消えません。モダンジャズのジョン・コルトレーンで最初に買ったレコードが「至上の愛」。これは辛いと思いました。名盤とお墨付きでしたが、あまりに重苦しいのです。もう一人の巨人、ソニー・ロリンズも好きにはなれませんでした。チャーリー・パーカーでさえ理解できなかったのでございます。

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それから、アート・ペッパー、エリック・ドルフィー、渡辺貞夫、スタン・ゲッツ、ケニーG、キャノンボール・アダレイ、ウェイン・ショーターと次々に、それなりに楽しみながら聴いていました。ずいぶん後に、コルトレーンの「バラード」を買いました。最初に、これを手にしなかったのが良かったのか悪かったのか、心の芯まで響くサックスの音色でございました。これまで、最も回数を重ねた私のベスト3の1枚になっています。同じようなバラード集はあっても、これを超えるものがあるでしょうか。

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ポピュラー音楽のバラードは、ゆったりとしたテンポ、静かな編曲、美しいメロディー、そしてラブソングを中心とした感傷的な歌詞を特徴とするのだそうです。初めに私が「バラード」に手を出さなかったのは、甘ったるさを少し嫌ったのかもしれません。好みは歳とともに変わりますし、ライブなのか、CDで聴くのかなどの状況に左右されるのでございます。生演奏であれば「至上の愛」にも、おそらく興奮できたでしょう。比べて「バラード」はスタジオ録音で、プロデューサーの意図によって編集されたのです。

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「聖者になりたい」と言ったコルトレーン。「バラード」は、聖者とは程遠い自分にも優しく強く語りかけてきます。真の実力を持った奏者が、気負うことなく紡ぎだすメロディー。あたり前のことを確実にする、それが本物の技量なのではないでしょうか。最近では、エリック・アレキサンダーの演奏にも通じます。しかし、その彼になくてコルトレーンにあるもの。それは高い「精神性」なのでございます。

掌中のアート
午後5時55分
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