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49アイドルの勧め(平成19年6月吉日)
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86 黒いデメキンの薦め(平成22年7月吉日)
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金魚はなぜ可愛いのか? 観賞用なら熱帯魚の方が美しいとか、珍しい生き物が好きだという人も多いでしょう。日本の夏、金魚はあまりにも定番です。鎌倉時代に中国から渡来した金魚は、突然変異種である緋ブナを改良したもの。江戸初期には贅沢品でしたが、江戸中期になると金魚は庶民の愛玩物となったのです。とりわけ、黒い出目金の何ともいえない奇異な姿を、私は愛しているのでございます。

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定職を辞めて無職になったとき、金魚を飼い始めました。私がしなければならない毎日の仕事は、犬の散歩と金魚の餌やりです。慣れないうちは、何匹か酸欠で殺してしまいました。餌の与えすぎや水草の入れすぎも良くありません。ちゃんと装置を付けて酸素を供給すれば、さほど難しくないことが分かりました。餌を毎日食べると驚くほど成長し、出目金の目などは不気味な大きさに変貌するのでございます。日がな一日、ゆらゆら泳ぐ金魚を観ていると、嫌な気分も薄らいだように思います。

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あまりに暇なもので、何ゆえ金魚が可愛いのかと考えずにはいられませんでした。逆に、熱帯魚はなぜ可愛くないかと。自然というものは美しくもあり、脅威でもあります。反対に人工的なものは、美しくとも見方を変えればグロテスクです。人為的な愛玩動物は、可愛がられるために作られたのですから、可愛くてあたりまえでしょう。そして、人が愛し育てなければ生きてゆけないのですから、存在自体が不憫です。人間という生き物も、大自然の中では容易に生きてゆくことができないのでございます。

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長期出張の仕事のために、大きく育った黒い出目金を処理しなくてはならないことがありました。預ける人も思い当たりません。しかたなく、生きていけないことも承知で近くの川に流しました。このような行為は、生態系を守るためにもしてはいけないことでございます。しかし、殺すこともできなかったのです。子孫を残すことも、生態系を変えることもないだろうと考えて、泣く泣く見送ったのでした。

掌中のアート
午後5時55分
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